櫓聲 竹露 清流硬式 15.3尺 節巻 綿握り

竹露流の次代として登場したのが、この竹露である。

基本的に、その特徴は竹露流を踏襲していると言ってよいだろうが、竿を集合としてみた時、全体的に細身へと移行し、調子がより洗練されたという印象を受ける。


これと関連するのであろうか、調子名が、竹露流の単なる硬式・中式・軟式から、竹露ではそれらの頭に清流・強流を付加した形へと移行し、より細かに分類されるようになった。

具体的には、字から想像される通り、強流は強さを感じ、一方の清流は爽味に富む性格で、前者は曲がりの支点を竿の先よりに持ち、後者は胴に乗ってくる傾向があると言えるのではなかろうか。

また、竿に印される「櫓聲」の銘が囲みなしになったことも相違点として挙げられる。

ただし、上記二点は、過渡期の作では竹露流と同様だ。


私の竹竿コレクションの一品、「竹露 清流硬式 15.3尺 節巻 綿握り」は、竹露としての特徴が確立された時代のもので、上の二特徴を共に具えている。


先にご紹介した竹露流と比べると、こちらが粗野とも見える野武士の如き重厚・精悍な面構えを具えているのに対し、竹露の方はおとなしく優美な、貴人を思わせる風貌であり、一見頼りなさそうな印象が否めない。

しかし、どうしてどうして、振り調子はその優美な身のこなしで仕掛けをピンポイントへ運んでくれる一方、魚が掛かると様相が一変、ぴしッと芯が通ったかの如く凛とした態度となり、まったくぶれることなく玉網まで運んでくれる。

製作期間が二年ほどと短かったため、今となってはなかなか入手の難しい竿という事実も、これを持つ者の幸福感を高める一因であると言えよう。

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