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竹馬 珠玉 16.1尺 口巻 籐・漆握り

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先代源竿師の三番弟子として修業を重ねて独立し、紀州から離れた関東の地に根を下ろして自らも一門を形成したのは、改めて言うまでもなく先代の竿春である。 その門から長男の清が出て、竿春きよしとして地歩を固めた後、二代目竿春を襲名したことも竹竿を愛好される向きはよくご存じであろう。 さらに、先代竿春の実弟修もまた、兄の教えを仰いで斯道を歩んできた。 竹馬である。 紀州から千葉の柏市に移った竿春は、大阪にいた修を自分の許へ呼び寄せて高校へ通わせ、修の弟子入りはその卒業後のことだったそうだ。 私の手元にある竹馬は「珠玉 16.1尺 口巻 籐・漆握り」のみなので、この竿師の作品の一般的特質を云々することはできないのだが、同竿についての個別的実感を述べると、竿春の本造りに比べ大らかな釣趣を味わわせてくれるように思う。 もっともこれは、十六尺という竹竿としては長尺のため、竿の操作全般が自ずとゆったりしたものとなることが、少なからず影響しているのは間違いない。 しかしこれを差し引いても、竿春の入念に火入れされた穂先が醸し出す鋭い釣り味は後ろへ退き、鷹揚な風趣が前面に出ているのは確かである。 私の保有する十六尺以上の三本、竹虎(魚心観)、京楽そしてこの竹馬の中でも、前の二本と比較して竹馬はずっしりとした重みと同時に、硬さとは異なる強さを手に感じるのだ。 その意味からすると、そもそも真珠と玉、本来は小さいけれども貴重で価値あるものを称える珠玉という脇銘は、若干そぐわないような気がしないでもない。 この脇銘の作は、比較的近年(といってももう数十年前)のものと思うが、へらの大型化と魚の濃さが顕著になりつつある状況に対応すべく、竿全体を働かせる生地組み・作りを採った結果が、上の如き印象を現出しているのかもしれない。 竿春一門の他の竿師同様、竹馬もまた合成竿に積極的取り組んでおり、その経験が純正竹作品へフィードバックされているのであろう。 なお、竿のグレードで言うと、珠玉は基本となるもので、この上に冠珠玉・専心珠玉・別選および別選専心珠玉という階梯があるが、ここを昇るとどのように変化するのかも興味のあるところだ。 できればいつの日か、専心珠玉辺りを竿春の百煉などと併せ振ってみたいものである。