鉄心斎 誉作 13尺 節巻 籐握り
今回ご紹介する「鉄心斎 誉作 13尺 節巻 籐握り」は、この竿師の作として私が二本目に手にしたものである。
一本目は、紀州へら竿に魅了されて間もなく出会った15尺で、初めての長竿だったため、上手く扱えるかという不安を感じていたのだが、いざ使ってみると持ち重りもせず、比較的思い通りに振ることができ、掛け調子にも深い風趣を覚えたため、いつかまた、今度は中尺の作を持ちたいと思った。
しかし、その思いとは裏腹に、それが実現したのは七年ほど経ってからだった。
鉄心斎は、しっかりした硬式の竿を得意としている。
このことは、当初よりその銘から自然と連想し、さらに色々な情報に接してそれが誤りでないことを知った。
私の出会った最初の鉄心斎については、長さがあった分、その特徴が比較的抑えられていたけれど、一本気で硬質な釣り味は、確かに具わっている。
一方、竹竿を愛用するにつれ、以前からの軟らかい竿に対する自分の好みが一層顕著になったため、鉄心斎の購入には些か及び腰気味になってしまったのである。
しかし、「待てば海路の日和あり」で、ある時、中古品ながら極めて状態の良い、しかも私の好みにまず間違いなく合致するであろう一本を目にして我がものとしたのが、この「誉作 13尺 節巻 籐握り」である。
13尺で元径が10mm、穂先もごく細く削られ、その先端の蛇口も小さく設えられている。
その外見通り、振った感じもごくしなやかで、強めの風の吹く時にはそれに靡くほどだ。
ところが魚を掛けると表情が一変――とは櫓聲の印象でよく語られる(私も先に書いたと思う)言葉だが、こと、本竿について言えば、それとは趣きが異なり、見た目と振り調子同様、どこまでも柔らかな撓みを見せ、手応えも至極優しい。
それゆえ、場合によってはやや魚の寄せに手古摺ることもあるけれど、そこで苛つかずに一呼吸待ってやれば、あら不思議、すんなりと魚の顔を拝めるのである。
魚の力を柳に風と受け流す、この独特の釣り味、私には何とも言えず好もしいが、現在のへらぶな釣りの情勢、および人情には、どうもそぐわないように思う。
そのような向きは、基本調の鉄心斎を選ばれるべきだろう。
満足のいく一本を見つけるのは決して難しくないはずだ。
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