山彦 志らさぎ硬式 10尺 節巻 綿糸握り
源竿師の一番弟子にして、「天才」と評された竿師が山彦である。
昭和12年、16歳で入門し、同16年に独立。
自らの技量を磨き高めるとともに後進の育成にも注力し、その門下からは、こま鳥、山彦忍月、山彦むらさめ、雀宝などが巣立った。
山彦の特徴は、時代の先見性と、優れた工芸技術を駆使した装飾性の高さにあると言えるだろう。
前者については、へらぶなの大型化の傾向が現れた際、穂先を太めに削り出し、胴に乗せ、竿全体で魚に対応する竿をいち早く世に問うたことは周知のとおりである。
後者に関して言えば、一目で山彦(一門)の手になるとわかる、透き漆で巻きにアクセントを付けた「すかし巻き」、美しくかつ機能的な形状を具え、さらにその表材として竹を張った「竹張り握り」が挙げられよう。
私が所有する山彦は二本、いずれも比較的早期の作で、ここにご紹介する「志らさぎ硬式 10尺 節巻 綿糸握り」は、その内でも製作時期の早いものである。
したがって、まだ穂先は細いが、絶妙の加減に火が入れられたためだろう、魚を掛けた時の絶妙な風合いと同時に、反りの生じることもほとんどない。
山彦らしい容姿の握りは、綿糸を巻いた上に漆を施すことで、滑り難さと、収納時の汚れの落としやすさが兼備されている。
そして、すかし巻きも画像の通り既に顕在。
四継ぎの十尺、短寸切りの生地組みながら、十分に吟味された素材から練達の技量により生み出された一竿らしく、実に美しい弧を描き見せてくれる。
その弧同様、釣り味もまた端正この上ない。
末永く使い続けたい一本だ。
山彦は古竹、火入れの二つが全てと思います。
返信削除冨田 様
削除あの独特な釣り味には、使う度に新鮮な魅力を覚えます。