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11月, 2022の投稿を表示しています

一心竹 特作山城 13.2尺 口巻 籐・乾漆握り

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私が紀州へら竿に魅せられてこの世界に次第に深く足を取られることとなったそもそものきっかけは、「 源一人 煌 10.1尺 口巻 籐・漆握り 」を手にしたことだが、それからさほど間を空けずに続いて入手した「一心竹 特作山城 13.2尺 口巻 籐・乾漆握り」の影響も小さくない。 元々、源一人を入手したのは、「竹竿を一本持ちたい」という程度の気持ちからで、それが叶い実際に使ってみて竹竿の素晴らしさに驚いたことは確かだけれど、そこから直ちにまた食指が動いたわけではなかった。 では何故一心竹を?と言われれば、理由はごく単純、源一人購入の際にその価格一割分の商品券が付けられ、折角なのでこれを利用しようと思ったのだ。 源一人を選択するに先立ち、紀州へら竿にはどのようなものがあるのか一通りは調べていたものの、当然ながらまだほんの上辺を眺めただけ、各竿師の特徴や評価などわかるはずもなく、また再購入の動機も上のようなものだったので、いま一本の選定は主に価格を基準にした。 加えて、源一人が十尺と短いので、少し長めのものがよかろうと考えた。 もっとも、あまり長いと果して使いこなせるだろうかとの懸念があったため十三尺程度のものに的を絞り、その結果見つけたのが一心竹だったのである。 これを初めて振った時、二つの印象を覚えたように記憶している。 まず、流石にカーボンに比べると重い、しかし徒に振り回そうとしなければ決して使い難くはなさそうだ――ということ。 もう一つは、竿を寝かせた時のだらりとした姿に対する違和感である。 第一の印象は、すぐに実際その通りであることがわかった。 片や違和感については暫く継続したものの、ふと気づくといつの間にか全く気にならなくなっており、それどころか偶にカーボンロッドを出した時など、何となくピンと伸び過ぎているように思えてこちらの方に不自然さを感じるようになった。 この感はカーボンロッドとの併用期間を通じて一層明確になっていき、最終的にカーボンロッドをすべて手放すこととなったのである。 もっとも、これらはいずれも中尺の竹竿一般の性質で、別段一心竹に限ったものではないだろう。 では一心竹固有の特徴らしいものは何もなかったかと言えば、確かに感じはしたのである。 しかしそれは、源一人で体験して一驚を喫した、魚が掛かった時に竿が自ら魚を上げ寄せてくれる溌溂さがなく、恰も...

雲影 秀水 11.1尺 口巻 竹・籐・漆・螺鈿握り

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……私の竹竿収集は、櫓聲をその中心・核とした上で、他の銘については、仮に浅くなってもできるだけ広くなるよう求めて来た……そんな中、例外的に雲影だけは、コレクション初期の段階で3本を購入した…… とは、先に「 雲影 竹有情高野竹 11.2尺 節巻 綿糸握り 」に記した文言である。 その後、もう一本の 雲影「光舟 9.3尺 緑節巻 綿糸握り」 もご紹介したので、今回は残る一つである「秀水 11.1尺 口巻 籐・漆・螺鈿握り」を取り上げたい。 購入の順序は竹有情・秀水そして光舟と、投稿のそれとは異なりこの秀水は二番目に当たる。 そして確か、竹有情を入手してさほど間を置かずのことだったように記憶している。 これは取りも直さず、竹有情の風趣に魅せられたからで、決してその銘に惹かれてのことではない。 実際、雲影なる竿師のことはほとんど知らなかったのだから。 さて、この秀水を実際に手にして眺め、振り、魚をかけてみて最も印象的な点は、その枯れた風趣、枯淡な味わいである。 油気の抜けた飄々たる佇まいを見せ、魚を力でねじ伏せるのではなく、時間はかかるものの悠然と相手をしながら最終的には意のままに操るその釣り味は、円熟・老練と称するに相応しく、これを振っていると、精選された古竹を用いた生地組みではないかの思いが自ずと胸に湧いてくる。 片や、竹有情はしっとりとした潤いと艶やかを具えており、光舟には若々しい活力と溌溂さが感じられ、同じ竿師の作でありながらこれほどの趣の差が出るところに、改めて自然素材から一本一本手作業で生み出される竹竿の面白さ、奥深さ――少なくともその一面はあると言えるだろう。 秀水のもう一つ目に付く特徴は、籐、螺鈿をあしらった漆に加え、さらに竹を配剤した握りだ。 これも既述したことだが、雲影はどちらかというと伝統的・オーソドックスな作りを基本としており、握りもほとんどが綿糸か籐、時折これらを併せたものが見られる程度である事実からすると、秀水のそれはかなり特異と思う。 竹の部分が凹んでいるその見た目通り、実際も手にぴったりフィットするわけでなく、人差し指と小指だけで握る感覚となるのだが、これが竿全体の調子と絶妙に相俟って、何とも言えない感触を腕から身体、さらに心へ伝えてくれる。 このような特質の一方、負担の掛かる玉口を二重巻きにしたり、その巻きの塗りもやや厚めに丁寧に...